古谷萌 イラストレーター/アートディレクター|インタビュー
頭の中からあふれ出たカラフルで少々グロテスクなキャラクターたち
1年前の『ひとつぼ展』公開二次審査会では、自らが描いたイラストをデザインしたTシャツを着てプレゼンテーションに臨み、見事満票でグランプリを獲得した古谷萌さん。シンプルな線と色使いによって描かれた、少々グロテスクでシニカルなキャラクターは、審査員達にどこか懐かしさを喚起させると共に、逆に今はそれが新しく感じられると高く評価されました。現在、広告代理店でアートディレクターの仕事をしている古谷さん。絵を描くことにとにかく夢中だった幼少期の話から、古谷さんにとって絵を描くことについて、また今回の展覧会のみどころなど伺いました。
ずっと描き続けてきた絵
完全にドラゴンボール世代なんです。小学校の時にひたすらドラゴンボールの絵を描いていて、それがすごく上手かった。たぶんいまだに描けます。ちょっと絵がうまいと、小さい男の子はみんなそう思うんですが、絶対に漫画家になりたいと思ってた。でも、ストーリーを作る才能が全然なくて。中学校の頃ある漫画を読んで、漫画は絵じゃない、内容なんだとあきらめがつきました。高校2年の時に、同級生の影響で美術予備校に通い始めました。美大とか何も知らなかったけど、絵やデザインが好きで何かを目指している友達が沢山出来て、それが衝撃的に楽しくて、毎日通いました。1日7時間くらいデッサンしても、集中力が全然途切れなかった。大学に入ってから、現在のコピックマーカーとペンで描き始めました。作品は今よりも毒が直接的でむき出しな感じ。血が出ていたりとか、頭がとれていたりとか……。今でもそうか(笑)。でも自分の中では、最近はだんだんかわいい感じになってきたと思ってます。でも、またむき出しに戻るかもしれません。
「ROUTINE」
色はすごくキレイだけどよく見ると恐い、とよく言われます。自分自身が苦しい時に描くことも多いです。年を重ねるごとに悲しいことは増えていくけど、絵にした瞬間に自分の中から一個それがでていく、そんな時もあります。絵に放出することで気持ちが楽になったり、自分の本心を知れたり、客観的になれたり。もちろん、単純に楽しい時や退屈な時の絵もある。そういう意味でかなり自己を反映しています。やっぱ「ROUTINE」なんだよなぁと思います。毎日の決まりきった作業で、それ以上の意味はない。唯一誇れるところは、作為的に描いていないということ。基本的には自動書記だし、出会った人や自分の感情といった毎日のことを、素直に偽り無く投影している。そうとう生々しく自分がでているので、人に見せるのが恥ずかしいモノではあります。
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アーティストとイラストレーターとアートディレクター
響きとしてアーティストよりイラストレーターの方がカッコイイな、と思うんです。アーティストというと、社会に対して何かを投げかけたり問いかけたり、重い方にいってしまう気がして。イラストレーターの方が少しカジュアルな感じ。それこそ広告にも使えてしまうくらいだし、面白い物を作っていけば色々な物に使われてどんどん広まっていくチャンスも多いのではと思います。普段は、アートディレクターとして仕事をしているので、仕事柄色々な人と出会えるのはとても面白いし、それがイラストにも影響したり、両方やることで利点も多い気がします。いいバランスで両方やっていけるのが一番楽しいのかなって。いつか2つの要素が融合していくことを目指してます。
新たな試み
今回の展覧会で新しい試みだったのは、グッズ制作です。自分の絵のアイデアを違う媒体にすることで、見る人との距離がすごく縮まったりすると思うんです。指輪やフォーク、グラスなど、金属やガラスの立体物にも初めて挑戦しました。工場の人や友達など、色々な人の助けを借りながらやっているので、本当に勉強になりました。絵を描くのは家で悶々とやるだけですけど、グッズ作りは制作過程で様々な人との関わりがあって、そこでリフレッシュもできてよかったです。立体物を作ってみるというのは予測不可能なところが多くてドキドキするし、いつも平面的な頭脳しか持たない人間には刺激的で、これからのアイデアにも繋がる良い経験になったと思います。何より、制作に付き合ってくださった皆様に、心から感謝です。
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イラストレーター/アートディレクター
1984年生まれ
多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業
第29回グラフィックアート『ひとつぼ展』グランプリ
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